KBSに入学した理由の一つがマーケティングを勉強したいと考えたことです。
前職では、外資系企業で既存顧客の生涯価値を最大化するカスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)の部署で営業とマーケティングの中間的な仕事をしていました。
起業するにあたり、主な販売チャネルをwebでの集客を考えており、自社の製品の提供価値をどのようにプロモーションしていくのかを考えると、自然とマーケティングに興味を持つようになっていました。
KBSでは修士課程の2年目にはゼミに入り修士論文を作成していくことになります。
1年次では基礎科目でマーケティング、経営科学、会計、組織、財務、生産、戦略をみっちり勉強して基本的な知識を身につけます。
そして、この“点”になっている知識を2年次の修士論文で体系化し、自分なりに課題を掘り下げて考えていくことになります。
KBSに入学する前に、入試対策としてマーケティング、特に口コミやCRMに関するジャーナルの論文を20本ほどダウンロードしたり、大学院生にお願いしてジャーナルをダウンロードしてもらっていました。このブログでは自分が読んで面白かったと思う論文についても紹介していこうと考えています。
そのうちの一つが、
Shu-Chuan Chu,Yoojung Kim"Determinants of customer engagement in electric word-of-mouth(eWOW) in social networking sites"(2011) International Journal of Advertising
です。
この論文は、SNSにおける口コミにおいて重要な要素は何かについて分析されています。初めてこの論文を読んだ時は口コミとSNSの間にある因果関係を統計分析によって分析できるのかと感動したのを覚えています。
今まで出会ったマーケティングの論文では構造方程式モデルを用いて分析を行うものが多くて、構造方程式を用いた分析というのは、まず自分で想定した因果に関する仮説をモデル化します。その仮説に対して、妥当性を統計的に因果の大きさや強さを推定・検定していく手法です。
SNSにおける口コミには
- Tie strength 鈕帯(ちゅうたい)性
- Homophily 同質性
- Trust 信頼
- Normative influence 規範的影響
- Informational influence 情報的影響
の5つの要素が重要であるというのが、この論文の主旨です。
鈕帯というのはその人との繋がりの強さです。同質性というのは考え方や趣味などが似ているということです。情報的影響は、自分でモノを買う時に判断を迷った時、妥当な判断のよりどころを他の人々の意見や行動に求めようとするものです。
SNSの口コミによる購買行動を考えた時、信頼している友人から商品を紹介されるのと、全く知らない人から勧められるのでは、圧倒的に購買行動に至りやすいというイメージでしょうか。
SNSを活用したマーケティングでは、こういった要素を勘案して仕掛け作りを行えば少しは効果が上がるのかもしれないと考えたのだが、この論文には、ツッコミどころもあるので、そこが悩ましい。